NBU日本文理大学

シラバス情報

注)公開用シラバス情報となります。在学生の方は、「UNIVERSAL PASSPORT」で詳細をご確認下さい。

科目名 送配電工学
担当教員名 川崎 敏之
配当学年 3 開講期 前期
必修・選択区分 情報電子・電気工学コース 選択必修 単位数 2
履修上の注意または履修条件 交流回路における抵抗、コンデンサ、インダクタンスの作用及び三相交流の知識を必要とします。
受講心得 電気エネルギーコースの必修科目です。
電気主任技術者免状の取得関連科目です。
教科書 前川幸一郎、荒井聰明共著 :送配電(新訂版)(東京電機大学)
参考文献及び指定図書 山口純一,家村道雄,中村格共著 :送配電の基礎(森北出版)
電気学会 :送電・配電(オーム社)
電気学会 :電気施設管理と電気法規解説(オーム社)
関連科目 電気回路論及演習、高電圧工学
オフィスアワー
授業の目的  前半:身近な存在である配電技術を中心に配電方式、配電線路の計算(電圧変動、力率、損失)、配電保護、中性点接地等の基本知識を習得します。電力エネルギーを面的に配分する配電の領域は、低電圧、短距離で分散しており負荷変動も大きい傾向にあります。この特性を踏まえ、良質の電気を供給するための基本技術に関する次の項目を主に学習します。
 後半:送電技術を中心に安定した電力供給を行うための基礎知識を習得します。大電力エネルギーを点(発変電所)と線(送電線)で結ぶ送電系統は高電圧、長距離で集中して大電力を供給するという特質があります。良質な電気エネルギー供給に対する社会ニーズの高度化、需要設備の多様化など電力流通システムを取り囲む環境の変化と将来展望も含めて送電技術の基礎を学習します。
授業の概要 講義は「配電」,「送電」に大きく分けて進めていきます。
授業計画 学習内容 学習課題(予習・復習)
○第1回 序論
 本講義の内容、目標について説明します。各種発電所で発電された電力が需要場所に送られる過程のうち、配電が含む範囲等を説明するとともに、配電技術の発達について説明します。また、学んでいくために必要な知識の再確認を行います。

○第2回 配電方式、配電線路の計画
 配電線路は場所によって呼び名が異なり、その構成にも数種類のものがあります。この講義ではその分類や構成について説明します。また、需要場所で必要とされる電圧、電力等に応じて異なる電気方式についても説明します。
 実際に使用される最大需要電力と設備容量との比をあらわす需要率、その他に不当率や負荷率等を説明し、それに関連した演習を行います。また、需要場所の手前に必ず接地される配電用変圧器の接地や容量の選定について説明します。

○第3回 配電線路の電圧降下、電線量、電力損失
 配電線は抵抗RとインダクタンスLが直列接続された交流回路として考えなければなりません。交流回路では電圧や電流に位相差があるため、それらの関係をベクトル図として描きながら、電圧降下がどのような式であらわされるかを説明します。
 ある条件下において、配電線路に使用する電線の量は電気方式によって異なります。同様に、電力損失も異なります。この講義では、単相2線式、単相3線式及び三相3線式について電線の量、電力損失を比較し、各電気方式について考えます。

○第4回 配電線路の力率改善、単相3線式とバランサ
 配電線路の力率は一般的に非常に悪いため、電力会社は電力以外に無効電力も供給しなければならないので、それだけ容量の大きな機器を設備しなければならない。本講義では力率を改善させるために用いられる進相用コンデンサとその容量計算について説明します。
 単相3線式は電線の量において、他の方式より非常に優れています(第5回目の講義内容)。しかしながら、負荷のバランスがとりにくいことや中性線が切れた場合には非常な不平衡が生じる等の問題点があります。本講義では、その解決策として考案されたバランサについて説明します。

○第5回 区分開閉器、保護継電器、避雷器、接地工事
 高圧配電線路では、線路を局部的に作業したり、火災とかその他の事故が発生したときに線路を部分的に止めたり、系統の切換などを行うために、線路の必要な箇所に区分開閉器が設けられています。本講義では、区分開閉器をはじめ、保護継電器や避雷器等の保護装置について説明します。
 人身安全、設備安全を図るために配電線及び機器は電気設備技術基準の解釈で定められた値以下の接地抵抗値を保持しなければなりません。本講義では4種類ある接地工事の内容を説明するとともに、それぞれが施される箇所についても説明します。

○第6回 柱上変圧器の2次側接地、支持物の建設
 柱上変圧器を高圧や超高圧の線路につなぐ場合、その低圧側の回路は様々な危険を防ぐために必ず変圧器二次側を接地しなければなりません。この講義ではその二次側接地線をどのようにつなげればいいかを説明します。また、どのような接地工事が必要であるかも説明します。
 配電線路を支持する木柱、鉄柱等の支持物は、人畜への安全性、安定した電力供給等のために非常に重要です。支持物の設計を行うには、支持物に加わる荷重、風圧荷重、電線の張力による荷重等の荷重条件を明確にしておく必要があります。本講義では、それら各荷重について算出式を含めた説明を行います。

○第7回 電線とその他の工作物、配電線路の保守
 電線には様々な種類のものがあり、使用される場所、条件等に大きく依存します。特に電線の太さは電圧降下、電力損失、許容電流、機械的な強さ等を考えて決める必要があります。本講義では、電線の種類について説明します。また、がいし等のその他工作物についても説明します。
 送配電線路のほとんどは屋外に設置されるため、厳しい条件下にさらされています。木柱は腐るし、絶縁被覆はいたんでくるため、定期的な点検が必要です。本講義では、線路や柱上機器についてどんな箇所をどのように点検するのかを説明します。

○第8回 配電電圧と各種電気方式
 配電方式には様々なものがあるが、それは需要場所での必要な電圧値等によって最適な配電方式が決められます。本講義では、主に使用されている配電方式を電圧値との関連も含め説明するとともに、アメリカ、ヨーロッパとの違いについても説明します。

○第9回 線路定数
 電線の材料として銅やアルミが主に使用されており、それらには必ず抵抗が存在します。抵抗値は材料の種類だけでなく温度等によっても変化します。本講義では、抵抗や導電率の計算法について説明します。また温度等による抵抗値の変化を計算する方法について説明します。
 三相送電線は鉄塔の上で3線の位置を正三角形に配置することはできないので、各線の自己インダクタンスは同一としても、各線間の相互インダクタンスは異なるため各相の電圧降下に差が生じます。本講義では、各線のインダクタンスの平衡化、一相当たりのインダクタンスについて説明します。
 線路には静電容量が存在するため必ず充電電流が流れます。静電容量には大地間にある自己容量、各相間にある相互容量の2種類があります。本講義ではそれらの各静電容量について説明するとともに、一相当たりの静電容量について説明します。

○第10回 T、π回路
 送電線路の計算は、線路上に存在する抵抗、インダクタンス、静電容量を考慮して行います。しかし、それは短、中、長距離の3つに分けて近似回路が異なります。本講義では、その違いを説明するとともに、中距離送電線路の計算に用いられるT、π回路について詳細に説明します。

○第11回 変圧器のインピーダンス、%インピーダンス
 送配電線路に接続される機器のうち最も多いものの一つに変圧器があります。したがって、これについては徹底して理解する必要があります。本講義では、理想的な変圧器について説明するとともに、漏れ磁束、巻線抵抗等を考慮した変圧器についても説明します。
 定格電流が流れた場合に生ずるインピーダンス降下が、回路の電圧に対して何%に当たるか、インピーダンス降下の割合でもってインピーダンスの大きさを表すやり方を%インピーダンスと言います。本講義では、%インピーダンスの定義や、変圧器や発電機についての%インピーダンスについて考えます。

○第12回 電力円線図
 送受両端電圧の位相差δと送電電力Pとの関係は円線図で表されます。送電電力を円線図で表すことにより、発電所から送られる有効電力や無効電力の関係、負荷電力と調相容量の関係を図に見ることができます。本講義では、この円線図によって電力がどのように送られ、どのように無効電力の調整が行われているか説明します。

○第13回 故障計算法、消弧リアクトル、安定度
 送配電系統は自然現象による災害を受けやすく、故障の発生確率が高く、異常が生じると系統内に異常な電圧、電流が発生し様々な問題が生じます。このため、種々の故障を想定し対策を行わなければなりません。本講義では、種々の短絡・故障計算法について説明します。
 送電線の故障の中で一番多いのは1線の地絡です。その保護装置として消弧リアクトルがあります。これは送電線の中性点に適当なインダクタンス・コイルを挿入して、故障回線を遮断することなくそのまま送電を続けようとするものです。本講義ではその消弧リアクトルについて説明します。
 莫大な資本を投じた発・送電設備であるからにはできるだけ多くの電力を送りたい。ある送電系統で送り得る最大送電電力のことを安定度と言い、それは安態安定度と過渡安定度の2つに分けられます。本講義では、安定度や電力円線図との関連性について説明します。

○第14回 直流送電
 例えば、海底線路を作る場合、ケーブル線路の静電容量の影響が極めて大きくなるため、海底線路を交流で作ることは不可能です。一方、直流線路では静電容量の影響がないため、充電電流は存在しません。本講義では、近年見直されてきた直流送電の利点、構成、制御等について説明します。

○第15回 総括
 総復習を行います。

○第16回 期末試験
 講義内容の全てを範囲にした期末試験を行います。持ち込みは全て不可です。
毎回課題を出します。
授業の運営方法  講義は教科書を中心に進めていきます。基礎的な事項を説明した後、演習問題を行い詳細な説明を加えながら解答します。練習問題を解く時間を多くとります。
備考
学生が達成すべき到達目標
評価方法 評価の割合 評価の実施方法と注意点
試験 80 持ち込み不可の試験にて評価します。
小テスト
レポート
成果発表
作品
その他 20 出席状況,課題取り組み状況により評価します。
合計 100