NBU日本文理大学

シラバス情報

注)公開用シラバス情報となります。在学生の方は、「UNIVERSAL PASSPORT」で詳細をご確認下さい。

科目名 行政法(Administrative Law)
担当教員名 松下 乾次
配当学年 3 開講期 後期
必修・選択区分 選択 単位数 4
履修上の注意または履修条件  とくにありません。
受講心得  配付資料を必ず持参すること。授業内容(板書)に自習した内容を加えたノートを作成すること。遅刻をしないこと。
教科書  授業で指示します。
参考文献及び指定図書  講義で指示します。
関連科目  民法ⅠA、民法ⅠB、民法Ⅱ、日本国憲法
オフィスアワー
授業の目的  行政をめぐる環境は大きく変化しています。この10年の改革の背景と到達点を見ます。戦後日本の行政は、政治(家)―行政(中央官僚)―地方(自治体)―経済(財界)の四局構図で、中心的な役割を果たしてきました(「護送船団方式」)。まず、このシステムの効率性に注目します。そして、今日財政赤字問題を発端に、この四局の見直しがはじまり、行政改革(省庁再編、首相・内閣の権限強化)、地方分権改革・市町村合併、規制緩和の各政策が展開しています。
次に、行政法学、特に現在でもその理論の基礎となっている伝統的理論を学習します。同理論は、ドイツの立憲君主下で完成し、戦前の日本の法学界、司法界に導入され今日に続いています。授業では、同理論の基本原理(法律による行政の原理)、基本制度(行政行為、独特の法規概念等)、そしてその問題点(全ての行政活動が司法救済の対象となっていない)と克服策を見ていきます。
近年の行政では、国民との対話を重視した活動が見られます。行政の最終決定に至る行政過程に、様々な形で国民・私人の関与を認めています。行政手続法、情報公開法、個人情報保護、環境情報影響法、政策評価法等々です。これら制度の背景・意義(行政の説明責任、透明な行政運営、また行政の効率性・顧客・成果重視の新公共管理、スリムな国家・規制改革)、各法制度の概要を学習します。
授業の概要 公務員試験の教養及び専門試験を念頭において授業を進めます。行政(政府・地方自治体)と国民の関係で、特に国民の人権保障を実現するのが行政法の課題です。まず、基本的な行政と国民の関係(例えば許可処分、制裁処分など)を具体的に見ていきます。ここでイメージされた行政法の全体像を踏まえて、今日の行政関係の課題を見ていきます。最近の司法改革では行政訴訟法が改正され、訴訟しやすくなりました。この点を踏まえ、現在の状況を見ていきます。
授業計画 学習内容 学習課題(予習・復習)
○第1回
行政法とは。授業内容のガイダンスです。シラバスを使って講義の内容、スケジュールを説明します。そのなかで、行政法という分野とこの授業の意義を理解してもらいます。
○第2回
行政法とは。行政法とその対象である行政の歴史的な展開を説明します。ヨーロッパの歴史のなかで権力分立の原理が確立していく過程のなかで、行政及び行政法の展開を見ます。まず、行政法とその理論が早くから展開したドイツを見ます。
○第3回
行政法とは。引き続き欧米の権力分立の歴史から行政・行政法の展開を見ます。ドイツ・ヨーロッパ大陸型の行政の展開・行政法の特徴と、英米とくにアメリカのそれとを比較します。
○第4回
行政法とは。行政法規の特徴を見ます。実際の法律を見て、刑事法民事法とは異なる性質を理解します(行政の行為規範であって、すべてが裁判規範にならない)。行政作用法と行政組織法に分類されます。また、行政内部・外部法の二分法もあります。ドイツにはじまる行政法の伝統理論の問題点を検証します。
○第5回
行政法とは。行政が19世紀、20世紀そして21世紀とどう展開し、行政法がどういう役割を果たしてきたかを見ていきます。行政固有の解決が必要か、「公法と私法」という伝統的な議論に触れますが、ここではむしろ今日の規制緩和の下での行政・行政規制のあり方も考えていきます。
○第6回
行政のしくみ。ドイツにはじまる行政法の伝統的理論において重要な概念となる「行政主体」「行政機関」概念を説明します。そして、日本の中央の行政のしくみ(政府)の特徴を見ていきます。とくに、戦前早期からアウトソーシングが実施され極めて効率的であったことを認識してもらいます。
○第7回
行政のしくみ。戦後復興を果たした戦後システム、すなわち行政―政治-経済―地方の4局構造が、行政(官僚組織)主導でいかに効率よく動いていったかをまず見ます(機関委任事務、護送船団方式と呼ばれる産業政策)。
○第8回
行政のしくみ。行政改革。戦後システムの機能不全が、政官の不祥事、財政赤字の問題化とともに表面化しその改革が求められる。20世紀の80年代、90年代の行政改革を見ていきます。
○第9回
行政のしくみ。21世紀に入り、財政再建はますます大きな課題となっています。他方国際政治は急激な変化を見せています。さらなる行政組織の(スリム化)、行政運営の効率化・民間化が要求されています。逆に政府のリーダーシップ強化の要請もあります。他方自律した国民も要求されます。規制改革と司法改革です。この回では、21世紀の課題と行政法のあり方を考えます。
○第10回
地方のしくみ。地方の組織を概観します。そして、戦後の地方自治の建前と現実を検証します。ここでは、まず機関委任事務・地方交付税制度を通して中央が地方の復興をいかに実現してきたかを見ます。
○第11回
地方のしくみ。地方改革。戦後地方の復興を支えた機関委任事務・地方交付税制度そのた補助金行政は、地方財政を圧迫するまでに至り機能不全を来たした。まず、地方に本来必要な政策を自ら実現させるべく権限委譲・地方分権改革が行われる。その経緯と分権の内容を検証します。
○第12回
地方のしくみ。地方改革は、地方財政の自主自立を欠き、その自主財源確保に苦慮している。ここでは、地方財政改革、市町村合併さらに道州制について見ていきます。21世紀の地方自治を考えて生きたい。
○第13回
行政過程と法。まず、伝統的理論(第4回参照)の問題、とくに司法救済の対象となる行政活動を限定する「行政行為」概念、および法律の解釈において行政の解釈を尊重・優先する「自由裁量論」の問題点を見ていきます。そして、問題の克服策として提起される「行政過程」の手続法化という傾向をまとめてみていきます。
○第14回
行政過程と法。まず行政手続法を見ていきます。各国の行政を巡る環境によって、行政手続法の具体的内容は異なる。まず、主要国の行政手続法と共通する原理(適正手続の原則)を見る。そして、日本の行政手続法制定の背景と特徴点を見ます。
○第15回
行政過程と法。日本の行政手続法を見ていきます。統一法典のない行政法分野では、最も重要な法律です。日本の行政の不透明性・不公正さを是正すべく、とくに申請に関する手続をルール化しています。
(※続きあり)○第16回
行政過程と法。情報公開法。さらに、行政運営の公正さを担保するために、行政情報の開示請求を求める権利を明確にし、行政運営の透明性を確保するのが情報公開法です。基礎となる原理が知る権利なのか、説明責任なのか、議論があります。個人情報の本人開示という自己情報コントロール権は、個人情報保護法で別途保障されることになりました。
○第17回
行政過程と法。実質的な参加、とくに公共事業をチェックするシステムを作り出しているのが、環境アセスメント法です。ただ、早期に事業をチェックできない欠点がありますが、行政の政策の説明責任と実施要領を定めた政策評価法がカバーしている。
○第18回
行政の活動形態と法。行政法の伝統的理論(第4回、13回)の特徴を整理します(行政主体、法規概念における行政内部外部二分論、行政行為中心主義)。伝統理論の核心にある行政行為概念の特質を見ていきます。
○第19回
行政の活動形態と法。活動の基準設定としての行政立法。行政行為を中心とする行政活動の枠をはめるのは、法律です。しかし、法律の内容は抽象的で必ずしも一義的に解釈できません。自由行政裁量論(第13回)に展開します。しかし、行政も自ら抑制するルールを作り(行政立法)法の解釈・政策の統一を図り、国民に対する公正を実現します。行政立法の機能と問題点を整理します。
○第20回
行政の活動形態と法。行政は、都市計画など国民のため一定の事業を計画し場合によっては自ら施工します。行政計画は、複数の許認可手続を経て、また関係者への計画縦覧等複雑多岐にわたる手順を踏んで実行されます。
○第21回
行政の活動形態と法。活動の基準設定としての行政計画。都市計画法を例に計画法の特徴を見ていきます。行政計画が争われた事例(土地区画整理法と土地改良事業法)を取り上げ、司法救済上の問題を考えます。政策評価法(第17回)の効用も同時に考えていきます。
○第22回
行政の活動形態と法。行政の実効性確保。行政は政策を実現するため、国民に強制する手段を持っている。それが行政強制である。しかし、人格・人権を無強制は制限される(代執行中心主義)。ただ、実力行使を含む破壊消防・警察官の職務執行などの即時強制、実力行使を含まない行政調査、さらに違反者の氏名公表・刑事罰等制裁など、多様な実効性確保の手段を持っている。
○第23回
行政救済と法。行政不服申立。行政に対する苦情は、総務省の行政評価、地方自治体の行政相談によって対処されている。直接行政に対して処分の再考を求めて異議を申し立てるのは、行政不服審査である。司法救済に比して簡便迅速かつ柔軟な対応が期待されるところであるが、問題も多い。
○第24回
行政救済と法。行政訴訟。最終的には、司法裁判所で処分等と取消しを求めることになる。これが行政訴訟である。日本の行政訴訟の特徴と問題を見ていきます。まず、司法救済の対象を行政行為中心であることです。伝統的理論の問題点でもあり、ここで再整理します。
○第25回
行政救済と法。行政訴訟。日本の特徴問題点として従来指摘されてきたのは、訴訟形態が少ないことと、原告適格すなわち訴える原告の範囲を限定しすぎているということです。かつてはこれら訴訟要件を備えないとして却下されてきました。判例が、原告適格について拡大傾向にあります。
○第26回
行政救済と法。行政訴訟。訴訟形態と原告適格さらに被告・管轄裁判所について、戦後最大級の抜本的改革が行政事件訴訟法においてなされましたその主要改正点を見ていきます。
○第27回
行政救済と法。損失補償。適法な行政活動でも、例えば都市計画による道路敷設で土地収用される場合のように、一部の国民に特別の犠牲を強いることがあります。このような場合には、損失を行政は補償しなければなりません。
○第28回
行政救済と法。国家賠償法。君主は悪をなさずで、違法な国家行政活動に対する損害賠償制度は、救済法の歴史では遅れて登場してきました。戦後日本では、憲法17条及び国家賠償法によってようやく確立されました。まず民法709条に対応する国家賠償法1条の内容を見ていきます。判例学説は救済の範囲の拡大を目指してきました。
○第29回
行政救済と法。国家賠償法。同法1条、すなわち公共施設(道路・河川)の管理者である行政の責任法です。
第30回
総復習
○第31回
学期末定期試験を実施します。
最初のの授業で配付された資料(冊子)の該当頁をしっかり読み予習すること。授業が済んだら、ノートを整理し、冊子の復習問題に取り組む。
授業の運営方法  とくにありません。
備考
学生が達成すべき到達目標 ① 行政法の意義を、近代の人権(権力分立)の展開から理解する。
② 基本的な行政関係から、最近の新しい行政関係の課題を理解する。
③ 様々な行政の活動形態(行政処分、行政計画等)に従って。課題を整理する。
④ 改正された行政訴訟の内容と現状を概観できる。
⑤ 以上に関する、キーワード(約80)を理解する。
評価方法 評価の割合 評価の実施方法と注意点
試験 80 第16回に定期試験を実施します。
小テスト
レポート
成果発表
作品
その他 20 出席とともに、最終回に自筆のノートを提出する。
合計 100