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対 談

初の上映会で映像制作の
魅力を再確認
実践的な学びで課題解決を目指す

工学部情報メディア学科メディアデザインコース小島研究室では、長年プロの世界で映像制作に携わってきた小島康史教授のもと、さまざまなジャンルの映像コンテンツを制作しています。今回、初の試みとして2022年6月17日~19日の3日間、学生たちが制作したドキュメンタリー6作品の上映会「大分ドキュメンタリー∞学生のまなざし」を大分市府内町の映画館「シネマ5」にて開催しました。上映後は、制作学生、教員、映像出演者によるトークショーも実施。3日間とも満員でイベントは盛況のうちに幕を閉じました。制作統括の小島教授、制作に携わった4年生の大塚建さんと河津祐輝さんの3人が座談会を行い、大きな収穫と自信を得たイベントを振り返るとともに、学生目線の作品づくりについてなど、さまざまな視点で語り合いました。

日本文理大学 工学部
情報メディア学科 教授
小島 康史 氏
KOJIMA YASUFUMI

岐阜県出身。日本映画学校(現日本映画大学)映像科卒。ドキュメンタリー映画の監督や劇映画のプロデューサーを務め、アムステルダムドキュメンタリー国際映画祭や東京国際映画祭などから作品招待を受ける。2016年より日本文理大学工学部情報メディア学科の教授として着任。専門は映像制作、ドキュメンタリー、CM、プロモーション映像。

日本文理大学 工学部
情報メディア学科 4年生
大塚 建
OTSUKA TAKERU

大分県出身。メディアデザインコース 小島研究室のゼミ長を務める。教員を目指してNBUへ入学するも講義を通じて映像制作の魅力に惹かれ、映像作家の道を志すようになる。「大分ドキュメンタリー∞学生のまなざし」では「92歳戦争体験者のうた」と「ごみ拾い」の演出を担当。卒業後はNHKの番組を担当する映像制作会社に就職が決まっている。

日本文理大学 工学部
情報メディア学科 4年生
河津 祐輝
KAWADU YUUKI

熊本県出身。メディアデザインコース 小島研究室に所属。情報工学を学ぶつもりで入学したが、小島教授に出会い映像制作の道に進むことを決める。「大分ドキュメンタリー∞学生のまなざし」では「大神の海〜回天生き残り兵の遺言〜」の演出を担当。卒業後は報道番組を担当する東京の映像制作会社に就職が内定している。

初めての一般向け上映会を開催し、
映像制作者ならではの喜びを体感

大塚:今回、映画館というパブリックな場所で初めての上映会でしたが、予想よりはるかに多くの人に来場いただきました。学生のうちに“自分の作品が世に出て、人の心を動かす”という体験ができたことは、映像コンテンツづくりの意義を感じる貴重な機会となりました。

河津:観た人からどのような反応が返ってくるか不安な気持ちで上映会に臨みました。私は映像には登場しないのですが、まるで“自分を見られている”ような不思議な感覚でしたね。

小島:本来、作品づくりは、お客さんに見てもらうことで完結します。脳死状態の娘さんをケアする家族のドキュメンタリー「眠り姫」では、ご家族の苦労のエピソードを知ってもらいたいという想いのもと、ご家族をはじめ、たくさんの人の協力をお願いしました。皆さんのご理解とご協力があってこそ完成した作品です。当初は学内上映のみでしたが、この上映会を実現させたことで多くの人に知っていただくきっかけが生まれました。

上映後に実施した学生と教授、出演者とのトークショーの様子

大塚:初めて、自分の作品を観客として大きなスクリーンで観ました。盛り上がる場所、音声の聞こえ方、音楽の効果などを学び、映画館ならではの迫力を体感。自分のつくった映像ですが、良い作品だなと思ってしまいました(笑)。

河津:作品の山場で、こちらの想定通りに観客の皆さんが盛り上がっているのを目にしたときはとても感激しました。その一方で、予想外の反応もあったり…と人によって、感じ方もそれぞれ。視聴者の反応に一喜一憂する、制作者ならではの楽しみを味わうことができました。嬉しい声も厳しい声も、真摯に受け止め、さまざまな意見を尊重しながらこれからも作品制作ができると良いなと思います。

大塚:上映後に記入いただいたお客さまアンケートでは“学生の作品だから”という視点はあるにしろ、「明日からの原動力になりました」「あのシーンはどうしても納得できない」などの率直な意見や感想が記入されていました。白紙だったらどうしようと不安でしたが、私たちへのアドバイスや応援メッセージなどのたくさんの声をいただき、次回作へのモチベーションになりました。

小島:観客の皆さんが一生懸命にアンケートに記入してくださっている姿が印象的でした。今までは関係者たちだけの、いわゆる“温室”の中で制作・発表してきましたが、今回初めて外の世界に一歩踏み出し、一般の方に観てもらったので、もちろん厳しい声もありました。しかし、忖度のない実際の感想を聞くことは、学生たちは恐怖を感じる反面、面白さもあったでしょう。感想だけでなく、入場料や本数など、さまざまな意見をいただきました。今回の経験やアンケート結果を活かして、上映会をまた実施したいという熱い想いを抱きました。

シチュエーションから出演者との関係性まで
学生ならではの作品づくりに大切なこととは。

大塚:特に“若者の視点でつくる”と意識していたわけではないのですが、今振り返ってみると今回の上映会の大きなキーポイントは「学生目線」だと思います。実際に、10代の鑑賞者からは「若者目線の作品でわかりやすかった」「身近な話題もあって好印象でした」との感想をいただきました。

河津:確かに、「学生目線」でつくろうと思って制作したわけではありませんでしたが、皆が作品に向き合って一生懸命制作した結果、今回上映した6本とも「学生目線」という点が共通していました。

小島:実際に、私たち大人にはできない描写が散りばめられていました。例えば、障がいのある子どもを撮影するシーンでは子どもが学生の手を引いて一緒に遊ぼうとするシーンがあります。お母さんは、微笑ましげにその様子を眺めていたのですが、学生はその姿を見逃さずにしっかりとカメラで押さえていました。学生が指揮をとっていたからこそ柔らかいシチュエーションが生まれたし、しっかりとそのシーンを捉えたのも素晴らしかった。「学生のまなざし」がしっかり表現できていたのではないかと思います。また、学生たちは“良いものをつくる”という目的に向かってとにかく一直線。大人だったら躊躇する場面でも撮影の手を止めません。作品に対して覚悟がある云々は別として、純粋さがゆえに生み出すことができた映像だと言っても良いかもしれません。これも学生だからこそ、つくり上げることができた映像作品だと思います。

「大神の海〜回天生き残り兵の遺言」撮影の様子

大塚:出演者の方には、感謝の想いを持つ一方で、できるだけ対等な立場に立つことを意識して、対応しました。しかし、今振り返ってみると、良い作品が完成したのは、出演者のサポートがあったからこそ。きっと、本当は見せたくない部分もあったでしょうし、どんな映像が完成するか不安を感じていたと思います。しかし、上映会後に「ありがとう」と声をかけてくださったので、安心しました。

河津:実は、出演者の方に「もうやめよう」と言われることが何度もありました。出演者の中には耳の悪い方もいて、ただ普通に会話するだけでもストレスを感じていたのだと思います。そんな状況でも最後まで協力してくださって・・・感謝の気持ちしかありません。

小島:学生には、いつも「まずは人を信じることが大切」と伝えています。人を信用して、疑問に思ったことは聞いてみて、相手の反応次第で質問を続けたり、謝ったりすればいい。同じ質問でも日によって答えが違うこともありますから。まずは相手に対して気後れせずに向き合うことが、良い作品づくりの第一歩だと思っています。

この経験を糧に、作品づくりを通して
社会問題に切り込む力を身につける

大塚:ドキュメンタリーをつくることは好きとはいえ、大変なことの方が多いです。しかし、上映会を通して多くの人に発信し、リアルな声をもらうことの喜びを体感しました。辛いことも多いけれど“癖になる楽しさ”をもう一度味わうためにも、2度目の上映会が実現できたら良いなと思います。

河津:今回の映像制作は、先が見えない真っ暗な状態をずっと走り続けるような感覚でした。しかし、完成した作品を観てもらえる嬉しさに改めて気づくことができました。次回は少しは余裕が生まれると思うので、この経験を糧に次回作に取り組みたいと思っています。

小島:今、NBUでは学内だけでなく、地域に飛び出して、企業や団体とコラボレートしながら社会課題の解決を目指しています。今回、学生の目線や考えが社会にどう評価されるのかを確認できたことは大きな励みになりました。アンケートからもわかる通り、地域の皆さんは学生の取り組みを理解しようと注目いただいています。これからも、学生ならではの柔軟さや考えを活かし、多くの人の心を動かし社会の課題を解決する力を養っていきたいと思っています。

KEY WORD

「大分ドキュメンタリー∞学生のまなざし」・映像コンテンツ制作情報メディア学科メディアデザインコース・シネマ5